株式会社東京営業部 代表取締役福元雅和氏
2003年11月22日
セールスレップ育成研修セミナー第3回
ご紹介いただきました株式会社東京営業部代表取締役の福元です。よろしくお願いいたします。
さて、株式会社東京営業部は、昨年の7月に営業支援を専門とした会社として立ち上がりました。我々はセールス・インキュベーション事業というものを行っています。
まず、一番最初にセールスレップ型支援ということで、複数の企業さんの商品を同一マーケット、同一ターゲットに向けて営業していくという形があります。1社さんの、我々が営業コストを実際に完全に負担して成果報酬が出てきますので、リスク分散させる形でセールスレップという仕組みを活用させていただいております。
その中で実際に、じゃあ、営業マン1人で、メーカーさん、完全に1社で担当をつけて、このメーカーさんのためだけに動く営業マンを1人つけるというような活動、レップ型から、どちらかといえば、完全な1社に対して1人型の営業支援に移行していく形もあります。
我々としては、レップを普及させていくというよりは、メーカーさんが東京に進出できればということをゴールと考えていますので、最終的にはレップで活用して育てていった営業マンをベンチャーさん、地方の中小企業さんと一緒に我々が共同出資のジョイントベンチャーの販売専門会社をつくって、そちらにこの営業マンを移籍するといった形も考えています。
そのメーカーさんにとっての販売会社をつくり出していくことです。これを我々の中でインキュベーションと呼んでいます。最終的には、そういった販売会社をメーカーさんにM&Aとか事業協定の形で買い戻していただきたいわけです。大体、我々の事業内容というのがこんなような形です。
具体的に今、実際に支援させていただいている会社なのですが、3社、ございます。1社は、もう完全に営業マンが1社のためについておりまして、2名、うち1社に対して1名ずつという形で営業支援をしております。あと、1社は、我々は学生のセールスインターンというのを活用していまして、今、学生で学校を休学して、大分からうちの会社に1年間、外で泊まり込みながら、うちで営業を勉強したいという学生がおりまして、その学生が、学生とはいえ、19歳の学生ですので、いきなり営業所というのもできるわけがないですから、売りやすい状況を作り出して、その後彼に行ってもらっているというような形のインターンをしています。
この商品の中身は、十割そばさんというベンチャー企業なんですけれども、飲食店なんかの厨房の中に入る機械ですけれども、そば粉のつなぎを一切使わない十割の、100%のそば粉だけのおそばを打てる機械です。これは職人さんが手づくりでつくろうとしても、非常に十割そばというのは打つのが難しいものなのですが、これは岩手県の片田舎の発明好きのおやじさんが非常に苦労して開発したものです。食品添加物を使った食品というものに非常に危機感を抱いて、何とか原料に一番近い食品を提供したいという、そういう思いの中から、じゃあ、そば粉だけで、荒れ地の中で育つそば粉だけでつくれるおそばというのを気軽においしくつくれるようにすれば、これはもう世界全体の食糧問題に寄与するんじゃないかというような考えで開発されたわけです。
我々の場合、商社出身とかではなく完全にメーカーサイドから事業を始めていますので、ある意味、後でお話ししますけれども、非常に無謀なというか、コンサルティング会社らしくない形で、もういきなり会社をつくって、リスクをとりながらやっているんですけれども、すべてが新開拓です。
十割そばさんの支援を始めるに当たって、外食産業マーケット年鑑という外食チェーンの本部リストが載っているものを買ってきて、1,000社ぐらい、手当たり次第に電話をかけたり、ファックスをしたりという営業をかけて。1,000社中、これは大体どんな業種とかでも結構、我々、経験則上で言えることなんですけれども、いい商品だろうが、悪い商品だろうが、100社コンタクトしても約10社。10%が見込み客です。10社は話を聞いてくれます。その中から1社、2社というところの確率論が保てる商品であれば非常にいい商品だというのが我々の考え方です。
十割そばさんというのは、1台150万円から360万円なんていう高価な機械で、狭い厨房に、いきなり後から据えつけるのが非常に難しい。飲食店にしてみても、メニューをすべて変えたりだとか、また、そういう機械を使う研修がたいへんで非常に入れるのにハードルの高い商品です。売る前にも最初にプレゼンテーションをして、先のような理念を説明して、共感を得てた上で、実際に食べておいしいというところがスタート地点でして。じゃあ、これから相手のお客さんのお店に導入していただいたら、どんなメニュー展開になって、事業的にはどう収支がとれて、何カ月で回収できるのかといったようなところまでプレゼンテーションし、相手のことまで考えながらやらないと全く売ることのできない難しい商品というようなのを一つ、やっています。
実際にことしの1月から始めて、半年間続いて、ことしの夏に注文が入り出して。これは我々、最初からねらっていることなんですけれども、1社、売れたら、その後、そのグループ事業に対して、他店舗に対して入っていくというような形でやると、一つの会社にかけた営業で2店舗、3店舗というような話になると収支がとれて、やっと我々としては回収が始まったというような状況です。
あとほかには、特許を持っている印刷会社なんですけれども、1都3県の自治体さんとか、あと物流会社とかに売るという商品を扱っており、大体、そのような形で2社の中小ベンチャー企業さんの営業支援を1人がやる、1社に対して1人がやるという形の営業支援をやっていいます。
私が、この短い1月から実際、まだ1年経過していないぐらいの中ですが、かなり固定費がセールスレップとしてはかかっている形で事業を展開しておりますので、相当、しんどいです。
その中で、皆さん、もし、もう独立されている方はご存じのことも多いかと思いますけれども、これからやってみようという方々のために、ちょっとリスクの対策をまとめさせていただきましたので、そちらのほうをご説明いたします。
まず、リスクの一つ目としまして、メーカーリスクというのを掲げさせていただきたいと思います。四つにまとめるために、かなり抽象的な話にはしてあるんですけれども、我々のほうでまず一番、我々の事業だからこそというのももちろんあるんですが、重視していますのは経営者です。メーカーの経営者というのが一番、この営業支援ということに関して、成功、不成功を分ける要因だと思います。
まず、我々、前提条件として支援させていただく前に、まず絶対、経営者に出てきてもらいます。担当者だけで話を進めていくと、こんなはずではないという形になってしまいます。
経営者の基本的な人格は当然のことなんですけれども、まず我々、セールスレップ、営業支援をする際にどういう姿勢で求めているかということでして、まず自分たちでは売れないので、何とか助けてほしい。マーケット戦略があるかとか、今までどんなことをしてきましたかということをお聞きしても、なかなか、もごもごと出てこなくて、非常に、こちらの販売力に依存してしまっている経営者というのは、実際におつき合いしていても、こういう基本体質というのは問題となります。
実際は本当にお手伝いしたくて、そしてそれをして、成功するパターンというのは、経営者が本当に自分で市場を歩き回っているような場合です。社長がトップセールスをしているのだけれども、時間もないし、他の仕事もやらなくてはいけないし、次の開発もしなければいけない。外から本当にこの人を助けてあげないとパンクしてしまうかというぐらい営業を頑張っている会社で、やっと営業支援をしているというぐらいです。まず我々は経営者、この人、まず経営者が手伝いたい相手かどうかというのを一番重視します。
あと、実際に運用し出すと、個人でやられるか、法人でやられるかは別として、私の場合は、私が契約をまとめてきて、実際の支援は営業課の担当者に営業をやってもらいますので、そこで見ていると問題になってくることなんですが、経営者ではなくて現場の担当者というのが実際に張りついている場合があるんですけれども、この担当者レベル、これは経営者レベルというものに近いものがあるんですけれども、例えば、見積もり一つのやりとりとかも非常に対応の悪い担当者というのがいます。我々が必死になって何度かまとめてきて、見積もり提出に、こぎ着けているのに、何日たっても見積もりが届かないとか、挙げ句の果てには出しても、もう相手の担当者が認めているにもかかわらず、仕様変更を入れてくるとか。ちょっとした注意事項を見落としてやったりとか。そういうメーカーさんの担当者とか、メーカーさんサイドのミスによって、我々が受注をまとめることができなくなる、そういうリスクがあります。ですので、相手のメーカーさんというのを、支援を始める前に、どれだけ相手の能力を見極められるかというのは、これはもう絶対必要な要素です。
あと、それと反対で、我々、余りこういう仕事はしないんですけれども、逆に言えば、今、どんどん、こういうセールスレップというのが注目され始めていますので、勉強して、セールスレップシステムを取り入れようとしているメーカーさんというのはあります。そういう方々はある程度、最初からセールスレップとは何ぞやということは勉強していますので、こちらからセールスレップについて啓蒙をする必要もなくて、ある程度、会社の背景なんかもセールスレップに改良したような形になっています。
ちょっと、これは一つ、メーカーリスクの前の話になるかもしれないんですけれども、このセールスレップという考え方自体が、もう、まさに最近、こういう形で普及し始めているんですけれども、メーカーさんとして、このセールスレップという仕組みに対しての、知識が相当欠けているというような場面が日本の現状でして、セールスレップというのはどういう仕組みだというのを、実際に経営者と自分で共有しなければいけないわけなんですけれども、そこのところの現状を知らなければいけない状況です。
アメリカの考え方、もともと生まれたアメリカでのセールスレップの考え方というのも、もちろんありますし、じゃあ、それをそのまま日本に持ってきて、成功するのかどうかという考え方もあります。あと、我々のように独自の仕組みでやっているところというのも幾つかあると思いますので、何が本当のセールスレップだという確実な定義はないんですが、そこに対して皆さんがどういうスタンスで取り組まれるかというのは、非常に大事なことだと思います。
アメリカの場合は非常に土地が広大ですので、例えばワシントン州とか、州ごとにセールスレップというのを1社ずつ設けて、全米展開する際に、分散して1カ所ずつ任せていくと。土地が広いがゆえに、そういうセールスレップという仕組みが、簡単に話をしていますけれども、必要だという話であります。
アメリカで何でセールスレップを使うかというと、これは当然のこととして、各州に自分の自社拠点を置いて、営業マンを1人ずつ配置するという、メーカーさんにとってはコストをかけられないということで、セールスレップを使えば、まず、売れた分の中から払えばいい成果報酬のシステムなので、メーカーとしてのリスクヘッジというやり方も一つ、あります。
アメリカはセールスレップが普及していますので、各州、レップの方がいらっしゃる。このレップさんは、皆さん、講義でやられたかもしれないですが、平均10社ぐらいの商材を扱っていらっしゃって、実際に自分が回っていくお客さんの中で、10個の商品の中からこれとこれといった形でレップのほうはリスクヘッジをしています。複数のメーカーの商材を紹介していくことで、レップ側はリスクヘッジをしていく。メーカーさんの固定費を削減したいというニーズともがっちりフィットしているので、大方のメーカーはそのような感じだと思います。
日本でも、この考え方をそのまま移行してきて、メーカーさんにとってもコスト、アウトソーシング、営業のアウトソーシングだとか、コスト削減という考え方だけで見られてしまうと、セールスレップをやればわかるんですけれども、非常に売り上げが上がってくるのにリスクがある商売ですので、メーカーさんがこういうスタンスですと、これはセールスレップ側としてはリスクが大きい。コスト削減の対象としてしか見られない。
もともとの理念、今、日本型ではどうやっていこうかという話になってくるかと思いますが、メーカーさんにもっとマーケティング情報を持っていって、いい商品をつくり出していきたい、流通を短縮化したい、という考えではない、単なるコストダウン的な考え方で見られてしまうと、非常に苦しいだろうなという話です。
ですので、我々のほうは、もうメーカーさんのまず意識改革をして、これは一緒にお宅の商品を売って広げていくための共同的な取り組みであって、本来であれば、我々は固定費をいただいてやっていく部分のところを、メーカーさんがどうしても固定費をもつだけの力がないで、我々はそこのリスクをとっていく。こういう最初の課題を共有しないとなかなか、特に中小企業さんを支援をするというのは、後々、いろいろな問題が始めた後で起こってくるということが多いです。
ちょっとゆっくり話し過ぎていますので、飛ばしたいと思いますけれども。
二つ目、コスト先行リスクというのが、これももう言わずもがなのことなんですが、あります。セールスレップというのは、基本的に成果報酬、完全成果報酬というのが通常の考え方です。ですので、まず、営業を経験された方なんか、もう特に実感されていると思いますけれども、営業をして、すぐに決まるものではないですね。これはもうお客さんが買うタイミングというのもありますので、我々、通常、曲線上、直線ではなくて、時間と売り上げの関係は直線ではなくて、ずっと売り上げが底辺をさまよって、あるとき、1個、売れると、あとは急に伸びるということがあります。この初めの1個が売れるまでが非常にパワーがいります。この1個が売れると、うまくすればずっともう、直線ではなく曲線上、比較級数的に売り上げが上がるというのが、我々が描く成功のパターンです。ここまでいけば、成功なんですが、実際には、ここの売り上げが上がらない状況が来て、そのまま売れないで終わってしまう。このリスクも当然、あります。ちょっと売れて、そのままずっと停滞していくという、そういう曲線もあります。どちらかといえば、こんなうまく比較級数的に売れていく可能性というのは非常に、何分の1や2だと思います。実際には低迷したりという、こちらのほうが多い。
レップのほうは、その売り上げが上がらない間、ずっと自分の人件費が中心ですけれども、投資しなくてはいけない。半年たって、やっと売り上げが上がり始める。ここで先ほどのメーカーリスクにもつながっているんですが、もうメーカーの社長さんが、この人に頼めば、すぐ売れるんだというばかりの考え方の人だと、まず最初に売り上げが上がらない時点で、種まきだとは思わずに、レップの営業力のなさだと判断してしまうというリスクがあります。
そうすると、こちら側もここまでいって、後は営業の相手の購買に合わせて最後の投資をするだけだという形でリスクを持っているけれども、メーカーさんにいきなり引き揚げられてしまう可能性、リスクというのが出てきます。
そうすると、もう、ここまでかけたコストというのは、一切、回収できないまま、芽が出たころにメーカーさんから、「はい、終わり」となってしまう、「もう、お宅には頼みません」という話になってしまって、みすみす、つくった見込み客リストというのがおじゃんになってしまうリスクというのがあります。
これはアメリカのセールスレップが最初の契約の際に注意することとして、後々の話をしますけれども、契約の問題というのが出てきます。期間をどれだけ最初に1年やりましょうとか、2年やりましょうとか、3年やりましょうとか。これをしっかり明記して、メーカーさんにもきちんとそれを守らせるという、この感覚が非常に大事です。
今は営業開始からのお話をしましたけれども、実際には、自分たちが支援する商材というかメーカーさんを探すという活動がレップとしてはあって、探しているメーカーさんも、会ったメーカーさんも、すぐに話が決まるのではなくて、本当に自分が売りたい商材があるかなということもあります。もう自分の手のかけようによっては、こんな商品になるんじゃないかというようなメーカーさんが、じゃあ100社あって、その中で何社、見つかるのかという話、我々、ファインディング活動と言っていますが支援先や商品を見つける、このファインディングという作業に相当に時間がかかります、また費用もかかります。当社の場合は、私が1人でその作業だけでもって、1人で半年やって、まだ2社しか成立していないという、こういう状況です。
気軽にやり始めるのはいいんですけれども、気軽にポンポン、ポンポン、売る商品じゃないと難しい。さっきのような売れるまでにかかる時間ということを考えると、簡単に、これ、いいかななんていう商品に簡単に手を出すというのは、最初の段階では非常に危ないです。自分がもうある程度、信頼を持っていて、ルートを回っている。その中でちょっと組み入れるというようなテストマーケティングのようなことができる状況までいっていればいいんですけれども、そこまでいっていない段階で気軽に商材を決めてしまうというのは、レップにとってはコストを余計にとってしまう可能性があります。
それで、ファインディングをして実際に見つかった企業さんに対して、今度、交渉していきます。条件交渉していきます。仕切りというか、コミッションを幾らにするかどうか、支払い条件をどうするのか、そういうのを一個一個。レップのシステムを持っているメーカーさんというのは本当に少ないので、代理店システムを持っていれば、まだちょっと話は別ですけれども。そういうような形で交渉している時間というのがかかる。
特に自分たちがこういうふうに直してほしいなんて始まったら、3カ月よりも延び半年かかっていましたというような、こういうことはざらにあることですので、全く売り上げの上がらないメーカーさんとのやりとりのコストというのは、非常にかかってしまいます。で、契約を結んでから営業して、また半年かかるといったような形なので、セールスレップの立ち上げという部分が非常に難しい、「コスト先行型」になるというふうに私は考えています。
三つ目として与信リスクというのがあります。
これは資金回収の仕組みの話なんですけれども、セールスレップには与信リスクがつきまといます。
まず一つは、自分が営業所に行く先、ターゲット先の顧客の与信、信用リスクです。セールスレップが売った後に、メーカーさんにお金で支払いますといわれますが、しかしまず、ここの支払いが本当に行われるかどうかという点の与信リスクがあります。
今度は、顧客からメーカーに払われたけれども、メーカーは条件では支払いが行われた後、5日とか10日以内にセールスレップに払われるケースが多いんですが、そういう支払い・回収条件にした場合、今度はメーカーさんがレップに対して払ってくれるかどうか、というリスクがある。この二重の信用構造、与信管理のリスクがあるわけです。
アメリカのほうは売掛金だとか、日本と比べてそういう信用だけで膨らんでしまっているときというのは少なくて、どちらかといえば、売った後、30日以内に現金回収、60日以内に現金でという前提が通常となっていますので、そういう意味で売掛債権がどんどん、どんどん、膨らんでいってしまうリスクというのがアメリカではそれほどないと言われています。
日本の場合は、180日サイトなどというのがあります。そういう条件が出てくると、与信の問題も当然、ありますけれども、さっきのコスト先行リスクも回収するための期間というのを考えると、気の遠い話になってしまうという問題があって、与信リスクというのが非常に大きくなってきます。
アメリカの場合はファクタリングという仕組みがありまして、そういう債権回収を代行してくれる会社というのが、これがもう通例化していまして、メーカーはある程度、手数料を払うと、レップが売った先に対して債権を回収してくれる、代行をしてくれるという仕組みが一般的になっています。
あと最後です。これは先ほども少しお話ししましたけれども、契約解除の手続というのがあります。
一つは、さっきお話しした、自分たちがもうすぐ売れるというころに、契約を切られてしまうという場合。これを回避するためには、期間をしっかり設定した契約をしましょうという話になります。
もう一つは、うまくいっていて、うまくいかなくなったときに解除される場合というケースがあります。その場合は、具体的に言いますと、例えば1回売った先に、どんどん繰り返してリピート注文が入ってきます。それに関しては余りケアしなくても、先にはどんどん注文が入ってきて、どんどんコミッションが我々に払われるような仕組みになっています。というような、自分たちが商売をつくったとして、それが機能しているうちに契約解除になりましたというときに、通常ですと、契約もちゃんとそうなっていて、自分が売った先については、契約解除になってもコミッションは入るという形を作っておく事が重要だと考えます。
あと、契約期間中に営業して回った先から、よくよく考えたんだけれども拡充したいという形で、契約解除後に注文が入った場合にどうするかという問題もあります。こういう話は日本の場合、契約というのは非常に概念が薄いものですから、もうその場その場でうまくいっているときは問題にならずに、メーカーさんともいい関係がつくれるんですけれども、悪くなってきて、切るという状態になってくると、それはだれの成功なんだという話になってきます。
セールスレップは散々、利用された挙げ句に、メーカーの意識によりますけれども、特に日本の場合はマーケットが東京に集約していますから東京である程度売り上げが上がるとレップに頼んで成果報酬を払ってということが何だかもったいない、自分たちが直接、営業組織を持ったらもっと売れるのにと、メーカーが考え出して、最初の前提条件を忘れて、ある程度売り上げが上がったときに、メーカーが気持ち変わりするという場合があります。
これは当然、アメリカでもあることで、アメリカでもある程度、一定の売り上げがいった時点で、役割ごめんという話は当然あります。そうなってくると、アメリカの場合には、この間、聞いた話なんですが、レップ間でお話をしていて、あそこの州のレップは売り上げをたくさん上げたから、もうメーカーが直接、切りかえられたらしいぞというような話になったときに、他の州のレップが、ああ、あれぐらい売ると切られるんだということで、逆に売り上げを抑えるような仕組みになってしまっているともいいます。
これでは、もともとの概念がひっくり返ってしまっていて、メーカーさんの営業支援のために始めるのに、本末転倒の難しい問題もはらんでいます。
我々の場合、最初からそういうことを考えていましたので、さっきのような、メーカーさんにとっての営業組織をつくって、最後はその価値を買い取ってもらうという考え方をしています。やっぱりお互いに目的・目標が一致するようにしないといけないと思うわけです。
ちょっと時間がないので、最後に、四つ、対策を言ってしまいますと、「商材と資金と顧客と契約」です。もしこれから始められる人がいれば、我々はこれを全部、苦労しながらつくってきたんですけれども、この四つがまず整っているということを前提に始めていただきたいというふうに思います。
一つ一つ、簡単に説明させていただきます。
まず「商材」なんですが、商材はできれば、恐らくレップという事業に対する私のアドバイスで話をさせていただければ、やはり複数の商品、支援するメーカーさんは少なくとも3社ぐらいのメーカーさんと契約を結んで、その後、事業を開始するというぐらいがいいと考えています。
私の例を単純にお話しさせていただければ、売り先となるマーケットの条件なんです。顧客マーケットがどういうところか。非常に中小で購買能力もなくて、支払い能力も非常に怪しいというような、そういうところは危険な売り先です。
中堅以上の企業が顧客マーケット層かどうか、またかけたコストに対して成功したときに広がる可能性、横展開の可能性があるかどうか、時間軸で考えてリピートのある商品であるかどうか、といった観点で、商材を選ぶべきです。
あと、これはやり方によると思うんですが、リピートの多い商品というのは、基本的に付加価値というか、価格の低い商品が多いんですけれども、これは前提として、我々はやはり付加価値の大きい商品、言ってみればメーカーさんの利益の大きい、1個の商品を売ったときに粗利益の大きい、付加価値の高い商品を選ぶべきだと考えています。結局、卸問屋さんに絶対勝てないんです。特に食材で大手の卸問屋さんなんかは配送センターを持って、物流機能を持って、1個当たりの粗利が少しでもOKです。そういう商売をやっている人には、どうやっても勝てないので、そういう商品は選ばないことです。商品選びのときの、ある意味、ニッチになってくるかもしれないですけれども、大手の問屋とかち合わないような商品を選ぶ必要があります。相当、専門知識とか説明能力が問われる商品、卸問屋が扱う商材とは全く違う、付加価値の高い営業というのができる商品というようなものを選ぶべきです。
2つ目の「資金」ですけれども、先ほど来、お話ししているように、相当、営業力があって、すぐに回収が始まって、こんな商品で始まればベストなんですけれども、基本的には最初は覚悟しながら、やったほうがいいという話です。
1都3県の販売店を持っていて本部は東京なんだけれども、全国に売りたい。では1都3県以外の売り上げはどうするか。また1都3県以外のところのメンテナンスについては、その地域の代理店、その地域のレップにお願いしますというような形になってくると思います。そうした場合、成果報酬のレートの配分を何対何対にするか。どうやって活動してくれる代理店さんに幾ら払えばいいのか。ここも非常に契約の面倒なところです。こういう点、アメリカでもその都度、都度にという話です。契約で、コミッションをはじめ、細かなお金の問題をよく詰めておく必要があるわけです。
「顧客」については、先ほどお話ししたのがほとんど。これから売っていく先の顧客マーケットが伸びている状態なのか、退いているか。その辺を誤ると、頑張ったけれども回収できないというような感じになってしまいます。
いろいろとセールスレップの課題をお話しすると、先ほどから、やるのが嫌になってしまって、面倒くさいなんていう感じを持たれた方もいるかと思うんですけれども、私はいろいろ細かい話をしましたけれども、結局、最終的には営業力だと考えています。メーカーさんが頭を下げてでもお願いしたというぐらいの力があれば、余り今のような小さい問題というのは、その影に隠れてしまうという楽観的な見方です。
これは皆さんだけではなくて、業界全体のこれからの取り組みにもなっていくと思うんですけれども、これぐらいのリスクというのも覚悟しておいてやれたほうがいいというのが、実際に1年、やってみた私からのアドバイスといいますか、そういう話でございます。
(了)