特定非営利活動法人 埼玉SOHO支援推進協議会 高橋伸治
2004年1月24日
セールスレップ育成研修セミナー第13回
この研修セミナーにおいて、「プレゼンテーションの技術」というテーマで研修を行う理由は2つあります。
1つは、セールスレップはメーカーに対してプレゼンテーションをしなくてはいけない立場にあるということです。メーカーの側に自分とセールスレップ契約を結ぶことがメリットがあるよということを説得しなければいけないということですね。それから、その後に、実際にレップに携わっているときには、今度は商品を購入していただく小売業などの方々に対しても商品の購入を説得しなければいけないからです。
今回の研修セミナーでは、大きく2つに分けてお話したいと思います。「T 文書作成の基本」「U パフォーマンスの基本」の2つです
最初に申し上げておきますと、プレゼンテーションというのは、もともとは英語で目の前にあるという、PREというのは前ですね。SENTは存在するといういみです。そういう言葉から、時間ではプレゼントというのは現在という意味になりますけれども、そういう言葉から出てきました。ただ、本来の狭い意味でのビジネスプレゼンテーションではなく、今回は広い意味でのプレゼンテーションの説明ということになるだろうということを最初にお断りしておきます。
繰り返しになりますが、プレゼンテーションという言葉は日本語になりにくい言葉です。あえて言うならば、仕事上の説得、説得行為というんですかね、まあ、そのくらいの意味合いがあると思います。ですから、目的は単に説明だけでではなく、説得であるということは押さえておきたいと思います。
プレゼンテーションのためのソフトとしてパワーポイントを使いますけれども、厳密には今日のセミナーはプレゼンテーションではありません。目的が説得ではなく、説明であるからです。見ていただくと、途中にキーワードが抜けている。例えば、2ページ目の2の2、プレゼンテーションの定義。そこでブランクがありますね。その次に説明をして、そこにキーワードを入れるという研修的に使っているということなので、厳密には今回、私はやるのは、これ自身はプレゼンテーションでは、私に言わせると、ないわけです。研修でやるということです。これ、クライアントにこんなことをやったら、絶対、怒り出しますからね。そういう意味では、きょうは研修用に少し使い方を変えてあるということをお断りします。
時間のほうですけれども、恐らく、このプレゼンテーションの前半が1時間ぐらい、それから休みを入れて40分ぐらい、後半ということで、二つに分かれていますので、そういう時間帯でやります。途中で休みを入れますので、小1時間、ご辛抱いただきたいと思います。テキストを見ながら進めていっていただいて結構です。
全体の内容は、プレゼンテーションの技術という中で、文書作成の基本、それからパフォーマンスの基本ということでお話しします。今、皆さんのお手元には文書作成のレジメがお配りしてあります。パフォーマンスについては休みの後にお配りします。かなり重複するところと、もう答えがこちらに書いてあるということがありますので、分けてお渡ししています。
前半の文書作成の基本は
という組立てになっています。しかし、時間の都合で、「ビジュアル化の演習」「ビジュアル化の基本原則」については、単に紹介ということで、詳しい説明は出来ませんので、予めご了承ください。
研修の目的ですけれども、まずプレゼンテーションという概念、内容、これを理解していただく。それから、営業活動の際に、どのように使っていただくということを説明します。
ところで、皆さんの中で、とりわけプレゼンテーション研修という、そういうタイトルの研修に出たことがある方、いらっしゃいますか。
システムエンジニアの方々は企業内研修でプレゼンテーション研修を経験している方が多いと思います。プレゼンテーション研修を社に研修で行うのは、やはりアメリカの企業ですね。例えば私の知人でもIBMにいらした方は1週間ほどのプレゼンテーション研修を受けたということでした。
私の場合は、もともとはマーケティングと企画、それからイメージ戦略のコンサルタントというキャリアですので、そちらの方面、広告的なプレゼンテーションを経験したわけですけれども、やはり企業内でのそういう研修と、それから外部講師が主催した研修に2回ぐらい、自分で参加して、技術を磨いたわけです。
ビジネスプレゼンテーションは、比較的少人数うに対して、ビジュアルツールを使用して、説得を目的として行われる、コミュニケーションである。
比較的少人数に対して行われるという前提です。講演会のような不特定多数に対して行われるものではないということです。それから、ビジュアルツールを使用するということです。ビジュアルツールというのは、以前はOHP、それからフリップチャートですね。時には板書ということもあります。
ですから、プレゼンテーションは時と場合によって、このようなパワーポイントでプレゼンテーションをしなくてもいいし、しないほうがいい相手もいます。私の場合も、必ずしもパワーポイントで、もうワンパターンでパワーポイントばっかりやるということはあえてお勧めしません。パワーポイント的なものが嫌いな人もいますよね。かなり年配の方なんぞは、嫌だということがあります。
それから、基本的なコミュニケーションの原理ですとか、ビジネスの枠組みがわかっていない若い人は、そういうツールについては強いけれども、やはりコンテンツ、中身のほうが弱い。年配の方にはチャラチャラした印象を与えて、かえってマイナスにもなりますので、相手を見るというのも非常に重要ですね。
それから、目的は説得ですね。こういう研修のときには説明が目的ですが、本当のビジネスプレゼンテーションは説得が目的です。
ビジネスプレゼンテーションの例ですが、私が実際に経験したきたわけですが、マーケティング戦略や広告の企画の提案が代表的ですね。実際、日本でプレゼンテーションという言葉が、最初に使われ出したのは広告業界だと思います。
それから、情報システムの提案ですね。これは、やはりかなり説明を要する商品、サービスを提供するには、まず説明と説得が必要であるということがあります。多くの場合、先ほどの要素、つまり、ビジュアルツールとか、図で見せるとか、そういうことが必要であるということです。
また、プレゼンテーションという言葉自体はあまり使われなかったと思いますけれども、以前から事実上、プレゼンテーションであったものは建築関係ですね。ビジュアルツールとして、これは模型なんかもそうですね。
ちなみに、丹下健三さんという、東京都庁を2回も設計した建築家がいますが、有楽町のときにも設計しているし、新宿も設計しているということですね。それで、丹下健三さんが現在の東京都庁の設計をしたときも、それはやっぱりすごい模型があってプレゼンテーションをしました。その模型の制作費が1,000万円だったというから驚きです。
それから、一番お金がかかっているプレゼンテーションというのは、私が知る限りは、オリンピックの誘致ですね。大阪の場合、間接費も入れると20億ぐらいかかっていると言われています。プロモーションビデオ的なのもつくるとかいうことを考えると、相当、お金がかかる。タレントのギャラにしてもということで、このあたりは最大のプレゼンテーションですね。
図にあるように、中心は「ビジネスプレゼンテーション」そして、「発表会・報告会・研修・セミナー」さらに、「企画書・提案書による文書による提案」という広がりがあると思います。
それから、プレゼンテーション概念の広がり。冒頭で申し上げたとおり、ビジネスのプレゼンテーションというのを、私は狭義、狭いところではこういうのをプレゼンテーションというと思います。
ただ、現実には、少し広く解釈すると、新製品の発表をするとか、調査の報告をするとか、こういう研修なんかもプレゼンテーションということがあります。、私がやっているのは、もうプレゼンテーションですね。
それから、企画書等、文書を渡してお話をするというのも、広いプレゼンテーションという範囲に入りますので、こういう使い方をする場合もあるし、それはプレゼンテーションではないとまでは申し上げるつもりはありません。
タイプ別の特徴は、表の通りです。
必要とされる能力は、図のように下から「情報力」「思考力」「表現力」ということになります。順番に、「インプット」「プロセス」「アウトプット」ということになります。
「情報力」というのは、「データベース検索能力」や「ヒヤリング能力」ということになります。「思考力」は「分析力」抽象化能力」「構造化能力」というように言い換えることができます。「表現力」とは「文書能力」「話す能力」「ボディランゲージ能力」などです。
料理に例えると、よい材料を仕入れる能力が、プレゼンテーションの場合の「情報力」。調理する能力が「思考力」。盛り付けやテーブルセッティングが「表現力」ということになります。
すべて重要ですが、特にもともとの材料が悪ければ話になりません。ですから、情報力は特に重要だと言えます。今回は、時間の関係で、「情報力」と「思考力」については詳しく説明できませんが、少し触れておきた思います。
最近ではインターネットを活用できれば、相当の情報を引き出すことができます。しかし、玉石混交です。以前は商用データベースというものが専門分野の調査や企画では利用されてきたわけですが、このデータベースの価値を評価する3つの視点があります。それは、信憑性、網羅性、適時性です。信憑性は正しい事実であること、網羅性はその条件のすべてのものが集められていること、そして適時性とは、必要なときにその情報が提供されることです。
ある程度プロとして、ビジネスを行うには、必ずしもデジタル情報と言わないまでも、印刷物の場合でもいいから、上記の条件を満たした情報源を知っていることが必要だと思います。
それから、かなり重要なのは、ヒアリングの能力なんですね。人から情報を入手するということが極めて重要です。実際、大宅壮一がメディアごとの評価を、おもしろいたとえをしていますね。知っていますか。新聞は何で、雑誌は何で、本は何。新聞は生ものだと言ってね。それから雑誌が干物かな。それから本が缶詰、ということで、情報源として、そういうメディアの特性の違いがあるわけですね。新聞は生もので、ものすごく新しい情報が提供されているけれども、すぐに腐る。雑誌は、少し古くなっているけれども、加工されいい味を出している。缶詰は、長時間食べられるということになります。
それで、そういう意味では、例えばある企画を、これまでの経験と違う分野の仕事をするというときに、私なんかもそうですけれども、例えば外食産業を、食品加工でつくっているメーカー、外食産業に参加、入っていこうと、参入しようとしているときに、やはりその企画を担当する人は、外食産業についての本をまず読む。本を読んで、概念を大体、基本的なことを理解してから、次のメディアに入っていく。突然、雑誌とか新聞を読んでもわかりません。ただし、本はやはり缶詰ですから、古いんですね。次に読むのは雑誌ですね。雑誌、外食産業関係の記事がある雑誌。専門の雑誌もありますけれども、『ダイヤモンド』とか『日経ビジネス』とかでも取り上げられることがありますから、そういうときに外食産業に関する特集みたいなものですね。そういうのを見ていく。それから、3番目には、業界誌という形でフォローしていくわけです。
そういう順番でいかないと、正しく理解できないんですね。かなり新聞系のメディアは間違ったこととか、非常に浅い記述というのがありますので、結構、だまされることもあります。そういう意味では、古いけれども、体系的なものから押さえていく。
そして、もし本格的な大きなビジネスをやるときには、最後は人ですね。本を書いている人、雑誌を書いている人ね。それから、新聞記者等。非常に生の情報を持っています。ただ、基本的な知識とか、そういうものを押さえてから、初めて人に行かないと、突然、人に行ったところで、的確な質問もできないですね。そんなことも知らないのかということで、教えてもらえないということがあります。そういう意味では、私が一番重視しているのは人なんですけれども、その前にちゃんとよく見なさいと。基本的なことを理解しないで、突然、インタビューはだめですね。
それから、2番目、思考力、分析をする力、それから抽象化能力というのが非常に重要なんですね。個々のものというのはものすごくたくさんデータとして集まるわけですし、それをグルーピングして、それにグループの名前をつけるという、グルーピングの抽象化なんですね。抽象化して、それの関係性をちゃんとみてということで、構造化というんですけれどもね。
そして、最後は「表現力」ですね。実は、きょうお話しするのはここだけなんですね。先ほども言いましたが、下の「情報力」「思考力」ができているという前提で、初めてきょうのお話になるということなんです。ここの能力については、もうしっかりおありになると。あるいは、ちょっと長いおつき合いをしなければいけないということだと思いますので、きょうのお話は「表現力」の部分だということです。
画面を見ていただいてお気づきになりましたでしょうか。私の場合、少ししつこいようですが、こういうふうに、繰り返し目次を挿入してプレゼンテーションを行います。
一つの項目の説明を終えると、目次を画面に映して、「全体のプログラムの、今ここの説明をいたしました。次にこれを説明いたします」というように進めていきます。これもプレゼンテーションの技術の一つです。
お手元に資料があるんですけれども、基本的にはこちらを見ていただきたいわけですが。そのときに現在、何をやって、次、何なのかというのを確認していくという、そのあたり、ロードマップということでしょうか。
まず、ちょっと理屈ぽいんですけれども、文書と文章と文、このあたりを厳密に使い分けていくことが大切だと思います。
文はいくつかの文字が集合して、完結した意味と形を採ったものです。易しく言えば、始まりの文字から句点までのことです。文章は、いくつかの文が集合してできた、情報の単位と考えられるものです。そして、文書は情報を伝達するために、文字を中心として記号で表現されたものと言えます。
なぜ、このように定義から始めるかと言いますと、議論をする際にこの3つの言葉が混同されて使用され、」相互理解を妨げて位いることがあるからです。特に、文書と文章は音的にも混同されがちです。
表にあるように、文書は中心である文・文章以外に、文字列、箇条書、表、グラフ、図・イラスト写真、そして罫線や網掛などグラフィックな要素があります。このように、整理してみて、初めて文書と文章の違いに気付くのではないでしょうか。
二十世紀末になって、文書は大きく変化しました。私はその変化を3つに集約して考えています。「ビジュアル化」「オンライン化」「ハイパーテキスト化」の3つです。
これらは、ITの発展、言い換えればパソコンとインターネットの利用技術が生み出したものだと言えます。
ビジュアル化についても、説明すると何日もかかるほどの内容があります。大きな枠組みとしては、図解、箇条書・表・グラフ・イラスト・論理図解などによるビジュアル化と、デザインとレイアウトによるビジュアル化に分けることができます。
デザインとレイアウトによるビジュアル化というのは、例えば段組や余白をどうするかとか、書体や文字サイズ、文字間隔と行間隔をどうするかということです。これらは、以前は印刷物にする際の、言わばデザインの専門家の領域だったわけですが、ITの進歩により、誰でもが利用できることになりました。言ってみれば、以前は必要とされなかった能力が、新たに要求されるようになったわけです。
オンライン化に関しては、最近はむしろネットワーク化と言われますが、電子メールの文書が、これまでの文書とは違ったルールを必要としてきたということが言えます。標題に結論を書くとか、詩のように、文節で改行して書くとかいうことです。
ハイパーテキスト化とは、インターネットの文書のように、音や映像が取り込まれている文書のことで、リンクが張られていることも大きな要素です。文章中心であったこれまでの文書に比べて、物事を構造的に把握する能力の向上が求められていると言えます。
このような時代変化の結果、私たちが企画提案するために関らなければならない文書として、次の4つがあると思います。紙の文書(企画書・マニュアル)、HTMLの文書、電子メールの文書、プレゼンテーションの文書です。
紙の文書は、先ほど述べたように、ビジュアル化の原則・ルールを理解して作成しなければなりません。それと、後ほど説明する文書モジュールを適用すると、格段に理解しやすい文書になります。
HTMLの文書とは、ホームページの文書です。フレームとか、リンクとかの機能を理解して作成する必要があります。高度なものは、専門化に作成してもらう方がいいのですが、簡単なものは自分で作成できるようにしておくべき時代を迎えています。
電子メールの文書は、ネチケットと呼ばれるマナーの原則があります。例えば、標題に結論を書いて、内容が標題からわかるようにするとか、複数の用件がある場合は、同じ相手に対しても、用件ごとにメールを分けるとかです。
プレゼンテーションの文書は、このパワーポイントの画面を見てお分かりのように、これだけだは完結していないという特徴があります。このように、生身のプレゼンターが説明することが前提とされているからです。
文章に対するルールというのは、膨大な数があると思うんですけれども、重要度の違いというのがあります。
ところで、皆さんはパレートの法則というのをご存知でしょうか? イタリアの社会経済学者が見つけた経験則なんですが、この法則は社会科学にとって大変な貢献をしています。TQCの世界では、パレート図というのが、7つ道具の1つと位置づけられていますし、マーケティングの分野ではABC分析に応用されています。
この法則は通称、2:8の法則とも呼ばれます。TQCでは、製品の不具合をもたらしている原因のうち、上位の2割を取り除けば、不具合の8割が削減されるというものです。ABC分析では、ある店舗に置かれている商品アイテムの中で販売額の高い方から2割のアイテムの売上合計が全体の8割を占めるというものです。
ま、2:8の法則と言っても、厳密にこの比率が当てはまるわけではないのですが、少なくとも重要なポイントから分析したり改善したりしていけば、量的にみた良化が得られるということです。
文章に関するルールとして、私は3つのルールに従えば、9割方改善すると考えています。それは、「適切な文長」「適切な漢字使用率」「適切な見出し率」の3つです。
<平均文長>
文の長さですが、長い文はわかりにくいのは言うまでもありません。短く、歯切れのよい文が理解を促進します。それでは、どの位が目安でしょう。私は、平均35文字程度が読みやすいと考えています。ビジネスの文章は、固有名詞など長い単語も含まれますので、45文字以内であれば、今日出来ると思います。
さて、それでは、実際に文章を書くときに、そんな平均文長を確認しながら書けるものでしょうか。私の経験では、文が長くなるようであれば、二つの文に分けるように書いていって、最大の文でも50文字を超えないように気をつけていると、結果的に、平均文長が35文字になります。60文字を超えないように気をつければ、45文字になります。
<漢字使用率>
漢字の使用率は、30%が目安です。漢字は多すぎても、少なすぎても読みにくいものです。昔から、印刷関係の人たちはこのことを良く知っていて、この漢字使用率を「黒字率」、(「クロジリツ」ではなく「コクジリツ」と読みます)と読んで、気をつけていたそうです。
実際に、漢字使用率の高いもの、適切なもの、少なすぎるものを見ていただければ歴然だと思います。
<見出し率>
適切な見出し率という言葉は、私が名づけたものでして、必ずしも市民権を得ているとは言えません。しかし、文章がだらだらと続くと読み手は嫌気がさしてきます。段落とかブロックとか単位が使われていますが、その全体の文字数についても、考えてみる必要があります。私は、適切な分量ごとに「見出し」を付加すべきだと考えます。平均で250文字程度、長くても350文字ぐらいがいいでしょう。
それから、文書モジュールという考え方。これはここに詳しく書いてありませんけれども、マニュアルなどを書く必要のある人には是非覚えていただきたい考え方です。
文書モジュールというのは、文書を「階層記号」「見出し」「文章」「例証」のセットとする考え方です。
「ブロック化の原則」「見出しの原則」「階層化の原則」「一貫性の原則」「例証の原則」があります。
この考え方を採用すると、文書は格段にわかりやすいものになります。また、書き手の生産性もあがりますし、改訂のときに特に威力を発揮します。また、紙の文書とHTMLの文書の相互変換が極めて容易になります。
ここでは、時間の都合上これ以上詳しくお話できませんが、先ほど申し上げたように、マニュアルなどを書く必要性のある方は、後日ご相談下さい。
冒頭に申し上げたように、ビジュアル化については、この時間で詳しくお話する時間はないのですが、箇条書きについては、少し、説明させていただきたいと思います。
箇条書の重要なルールとしては、「7項目を超えない」「通常の文書では2文字分を字下げする」「順序に意味のある場合は番号をつける」「順不同の場合は記号をつける」というものがあります。
特に、7項目を超えないということは注意していただきたいと思います。プレゼンテーションの場合、私はさらに減らして5項目以下になるようにしています。
どうしても、7を超えてしまう場合はどうすればよいでしょうか。グループ分けして、そのグループの数が7以下になるようにするのです。つまり、階層化を計るわけです。表の場合も同じことが言えます。表の用語として、英語では、ネスティングといいいます。
2文字分の字下げに関して、補足すると、2段組などのように一行の文字数が少ない場合は、1文字でもいいと思います。認知心理学的に言えば、5%分字下げしてあれば、文書の中の違う要素であることが認識できるのだと思います。
それでは、「T 文書作成の基本」に引き続いて、「U パフォーマンスの基本」のお話をさせていただきます。
先ほどの復習になりますが、プレゼンテーションというのは総合的なコミュニケーション技術であり、「情報力」「思考力」「表現力」のすべてが要求されるというお話をいたしました。そして、文書作成もパフォーマンスも「表現力」ということになります。
ここから、話の組み立て方ということですけれども、実際には話の組み立て方というのは、いわゆるプレゼンテーションをする内容によって違うので、一概に言えないのですが、ここでは共通する基本原則についてお話します。。
まあ、これはプレゼンテーションに限らず、コミュニケーション全般の原則ですが、相手のプロフィルを確認するというのが最初です。例えば、システムを提案するときに、意思決定者がどのぐらいの知識があるかによって、説明をする内容を変えなければならないわけです。
それがおもしろいのは、趣味ですね。ビジネスで相手の趣味とか関係ないようですが、その人の趣味だとかいうことも含めて、なるべくたくさんのことを調べておくことが于訳に立つことがあります。
それから、企業によってはタブーになっている事項などもあるので、注意が必要です。ある企業の大きな歴史みたいなものですね。以前の経営トップの女性スキャンダルや何かがあって、そのような冗談がタブーということもあるわけです。
それから、SDSの原則で話すということが重要です。起承転結は、私はプレゼンテーションでは組み立ては間違いだと思います。まず、結論を言う、そして、その理由・背景などの詳細を述べる。さらに最後にもう一度、結論を言う。これを、サマリー、ディーテール。サマリーの頭文字をとって、SDSというのです。
もちろん、持ち味なので、こいつ、何を話しているのかという、何が言いたいのかとわからないんだけれども、話がおもしろくて、最後になるほどという、そういう話ができる人もいると思います。でも、例えば、私の経験だと、意思決定者がずっといてくれるものだと思って話をしていたら、途中でいなくなっちゃうことが、結構、経験があります。ただ、やっぱり結論は話しておくこと。これ、重要ですよね。そうすると、あと、じゃあ、部長、頼んだよといったときに、詳細については部長が確認するわけですが、結論については意思決定者も聞いているわけですから、「どうだった」と言ったら、「こうこうこうで」と、最初の提案を受け入れると思うんです。
先ず最初に、その日のプレゼンテーションの目的を話しておく必要がありますね。契約してもらいたいのか、決めてほしいということですね。それから、時間配分を伝えておかなければ生りませんね。
さて、ここからが本題です。皆さんの中では、パフォーマンスって何?と思っている方も多いと思います。実際、パフォーマンスという言葉は、色々な意味で使われるわけですから、当然です。
ここでは、以下の内容のお話をします。
ここでは、「明瞭な発音をする」「はじめはゆっくり話し始める」「声の大きさ・スピードに変化をつける」「ドミソの理論で話す」「一番後ろの人に話しかける」という原則についてお話します。
明瞭な発音をするということは重要です。人は、自分の発音が明瞭であるかどうかについて、謙虚に受け止めていないことが普通です。録音してみて、確かめること、第三者に評価してもらうことが重要です。
それから、初め、ゆっくり話し始めるというのが重要です。ずっとゆっくり話すと、「こいつ、とろいのか」ってことになりますけれども、なぜ、初めにゆっくり話し始めるかというと、明瞭に話して、私、明瞭に話しているつもりですが、ある程度、癖があると思いますね。皆さんもいろいろ癖があると思います。そうすると、最初から早く話されると、聞き取れない。ところが、最初にゆっくり話すと、癖があっても聞き手のほうがかなり順応性があるんです。だから、合わせてくれるんですね。また、初めはゆっくり話し始めると、落ち着くというのもあるわけです。
それから、声のスピード、大きさに変化をつける。同じスピード等で話すと眠くなります。だから、時々、早く話してみたり、「実は」とか、間を持って‐‐‐スピードを落としてみたりということが必要です。
<ドミソの理論>
さて、ドミソの理論なんて聞いたこと、ないでしょう? これは、コミュニケーション研修の大先輩なんですけれども、NHKでプロデューサーをやっていた勝田光俊さんから教えていただいた理論です。この方はもともとは理系の方なんですけれども、NHKに入っていろいろな番組を担当して、やっぱり演出もやれということで、プロデューサー、それから監督、ディレクターまでやることになるんですね。NHKもおもしろいですね。そういう積極的な、学校の専門とは関係ない仕事もやらせう分けですから。
それで、ディレクターをやったときに、演技指導をしなければいけなかったということがあって、それでいろいろな勉強をしたのだと思います。その方がいわゆる企業も個人も演出が必要だということで、NHKを退社して、演出力開発研究所という会社を設立して、企業や個人の指導をしていたわけです。
その方と話をしていたら、ドミソの理論というのがあるということになって、詳しく教えていただいたのです。これは、自分の声のキーというんですが、声の高さに関する理論なんです。
声の高さには個人差があるので、説得力のある声の高さは、「自分のド」ということなんですね。「自分のド」は「あー」という声を出した時、自分の胸腺のあたりが震えるたかさだといわれています。掌を胸腺のあたりにおいてみて、声を出して、自分のドをかくにんしてみてください。
それから、フレンドリーな話し方の場合、声の高さはミということになります。この場合は、自分の口腔内、つまり頬骨の辺りが共鳴する高さなんでね。ソは頭に抜けるような高さの声で、選挙演説のような絶叫の時にしか使わない高さということになります。
低い声が説得力があるというのは確かなことで、ニュース番組などでメインをはる女性キャスターのことを思い出していただくとわかると思います。
それから、これはプレゼンテーションの場合は、先ほど、少人数でということであれば、あまり関係ないんですけれども、こういう説明会のときは後ろの人に話しかける。その人に聞こえているか、声の大きさのチェックですね。
それから、アイコンタクト。1対1のアイコンタクトは当たり前ですね、わかりますね。問題は、複数の人に話をするのに、アイコンタクトはどうするのか。そういうふうに疑問に思わなかったでしょうか。同時に何人の人とアイコンタクトすることは不可能なんですよね。
結論は、1対1のコミュニケーションに還元するんことなんです。ひとりづつ、ある単位でアイコンタクトするということです。その時、どういう単位でアイコンタクトするかというと、ワンセンテンスで1人の目を見て、次のセンテンスで次の人ということなんですね。
話の途中で、アイコンタクトを切られると、相手は不快になります。けじめの付くところで、別の人にアイコンタクトを移さなければならないわけです。日本語の場合にはセンテンスが終わらないで、息継ぎをしたり、それから省略しちゃったりしますね。ですから、息継ぎをする時でも許されると思います。
それから、アイコンタクトの一環として、SSSの原則というものがあります。これは、今のように画面を見てもらいながらプレゼンテーションしている時のことなんですが、プレゼンターは画面を見て、皆さんに向き直って、話すということが原則だということです。これが、シー、見る、ショー、見せる、スピーク、話す、頭文字をとってSSSの原則というものです。
そもそも、アイコンタクトの目的はなんでしょうか? それは、相手の反応を確かめながら話すためのものです。目の周りの表情に、疑問や反感、あるいは同意や受容の兆候が表れるからこそ、アイコンタクトが必要なのです。SSSの原則にしても、スクリーンを見ながら話をしていると、相手がどのような反応をしているのかわからないから、話すときは相手の方に向き直って話さなければならないということになるのです。
次にビジュアルハンドという手の動きについてお話します。内容としては、「話に合わせた手の動き」「数字を表す手の動き」「上から速く」「下からはゆっくり」「ホームポジションおよび原稿の持ち方」があります。
話に合わせた合わせた手の動きとは、例えば、「長い期間」という言葉に対しては、手を広げながら話すのが自然ですし、逆に「短い期間」であれば、目の前で左右の掌を近づけるようにして話をします。
欧米のコミュニケーションでは、このようなジェスチャーが当たり前のようになっていますが、日本では文化的にそうでもありません。そこで、私としては、話の中で数字が出てきたときがこのビジュアルハンドを使うチャンスだと考えています。例えば、「本日お話いたします3つの重要なこと」と言いながら、指を3本立てて見せるというようにです。
手の上下の動きに関しては、例えば、決意を表す場合など、上から下へ手を動かすわけですが、この場合は速く動かします。逆に、「徐々に気温も上がって」というような話で手を動かす場合は、下から上へゆっくり動かします。これは、人々が引力の関係で、物体の動きがそうなるのが自然だと感じているからです。
表情と姿勢に関しては、「LSTの原則/基本的には笑顔で」「重要なポイントで社真剣な表情で」「自然体で半身に立つ」「近づくときはゆっくりと」「離れるときは素早く」という内容のお話をしたいと思います。
LSTとは、ルック・スマイル・トークとう英語の頭文字を並べたものです。話し始める前に、相手の方々をしっかり見て、一拍おいて、微笑み、そして、話し始めるという落ち着いた態度が必要だということです。前向きな態度、肯定的な態度という意味では笑顔が基本になります。しかし、強く主張したいポイントでは、表情を引き締めて話すべきでしょう。
皆さんは、プレゼンテーションの際の立ち方などは考えたことがないと思います。しかし、この立ち方一つにも気配りが必要です。基本は、肩幅よりやや広めに足を開いて自然体でたつということです。しかし、私の場合は、さらに積極性をアピールするために、半身に立ちます。つまり、右足を半歩前にして立つということです。
女性の場合は、足を60度ぐらいに開いて、左の足の土踏まずのところに右の足の踵をつける立ち方、いわゆるコンパニオン立ちという立ち方をお勧めします。
時として、動きながら話すことがありますが、相手に近づくときはゆっくりと、離れるときは素早くが原則です。
プレゼンテーションの最中にプレゼンターは、コミュニケーションを2ウェイにするために、質問を交えます。その際の質問には3種類あります。全体質問・個別質問・そしてレトリック質問の3つです。
全体質問は、「どなたかご存知ですか」というように、質問の相手を特定しない質問です。個別質問は、「山田専務、いかがですか」というように相手の決めての質問です。この際に、相手の知識や能力を計る様な質問の内容は決してしてはいけません。
レトリック質問とは、「ここで最も危険なことは何でしょうか」と疑問形でコメントして、「そうです。カントリーリスクです」と自分で答えてしまう形式の質問です。ややもすると相手は完全な聴衆になってしまいますので、このテクニックは相手の緊張感を回復させるのに役立ちます。
プレゼンテーションの醍醐味は、一通りの説明を終了してからの質疑応答にあります。シナリオ化されている説明部分は、新人でもできますが、質疑応答の場合は、桁違いに知識と経験が必要とされます。ですから、つい緊張して、質問が出なければいいというような表情が出てしまいがちですが、これではいけません。質問がでないということは、関心が低いということです。むしろ、質問を歓迎するという姿勢が必要です。
それから、「それは期間的に無理じゃないか」というような否定形での質問がでることがありますが、これは肯定形に直して、質問を再構成して話すべきです。「ただ今、加藤常務から、短期間に実施するためにはどうすればよいかという質問をいただきました」というようにです。
最後の決め手は、質問をチャンスと捉え、自らの主張を繰り返すことです。
その他、お話しておきたいことがいくつかあります。内容は「資料の棒読みはしない」「重要なポイントは繰り返す」「板書はキーワードだけにする」「リハーサルを行う」などです。
プレゼンテーションの資料に書かれている文章を単に棒読みしていると、聞き手は、先に資料を目で読んで、プレゼンターの話を聞こうとしなくなります。資料は資料として、言葉を換えること、補足的なトピックスを話すことが重要です。
重要なポイントは、言葉を換えながらも、繰り返し強調しておくことが必要です。人が一度聞いただけできちんと記憶し、理解すると考えることは間違いです。ですから、区r帰しておくことが必要なのです。
学校授業などは、膨大な時間を費やして、板書していますが、時間延ばし以外の何物でもありません。板書している間は相手の反応を確認していないわけですし、書く速度に比較して、読む速度は桁違いに速いので、退屈な時間とないります。演出として、キーワードだけをアドリブの様に板書することはよいとしても、文を書くのは間違いです。
最後に、今お話したパフォーマンスの部分は、単に知識として持っているだけではいけません。同時にいくつものことをしていなければならないわけですから、踊りや落語のように繰り返し、稽古して身につけなくてはいけないことです。話す内容の量と、時間との関係を把握するためにもリハーサルが必要です。
(了)